NOVELA
期間:2006-2008
用途:専用住宅
所在地:神奈川県横須賀市
規模:地上3階
構造:S造
用途地域:近隣商業地域
許容建蔽率・容積率:80%・300%
敷地面積:99.24m2
建築面積:62.62m2
延床面積:167.53m2
構造設計:名和研二/なわけんジム
施工:大同建設 平井浩喜
写真:上田知正、児玉遼
担当:児玉遼
October Ueda and Nakagawa Architects

形そのものが構造的に役に立つというのは、バジェットの使い方においても意味があるし、意匠的決定に構造が従うというあり方を転倒することで空間の質を実は拡張してくれる。目的は、結果的に、意匠的なものにあるという「反語的」なスタンスである。空間的には、semiflatの時から考えている「大きなストラクチャー(/大きな理由)の中に人が入ること(の居心地のよさ)」を目指している。

すこし材を傾けるだけで形態そのものが自ら安定し、材の断面性能とジョイント部の剛性への依存度が低くなる。NOVELAは筒状ではなく立方体状なので、斜め材を立体的に使っている。場所としては大きく分けて、コア的な部分と外周部。コア的な部分は形状それ自体が、外周部はそれぞれにかかる水平力に対抗する強力でコンパクトな筋交いユニットと鉛直荷重も受け持つ斜め材の分散配置が水平力に抗しており、その両者をR階スラブおよび各階の外周部の梁がつないで一体的・相補的に働かせている。

コア的な部分は最初期はRCでイメージしていた。これはMTYと同様で、MTYは端部にあるRCのボリューム(オーディオルームで遮音目的でのRC)に残りのスチール部分(特に2層目床)の水平力を負担させているが、NOVELAは正方形の一角をRCコア(3層分なので高さ方向も考慮した下広がりの異形コア)にし、それを取り囲むL字の床部分(スチール)の水平力を負担させるということである。ただしコア-床の間にヴォイドを挟んでいるため、梁を多方向に飛ばしそれを避けながら進んでいくイメージを持っていた。コアを地盤の問題からスチールに置き換え、負担の集中を軽減させ分散型へと向かったが、ヴォイド挟みの問題については逆に素直な展開となったわけである。

空間的には、閉鎖的なコア部、閉鎖的でない床部(腰壁しかない)、両者の間にあって両者および各層をつなぐヴォイド部(階段が位置する)の3種類とし、それぞれの性格を明確にした。用途的には小さく閉鎖的なところに個人的な空間を、広く開放的なところに共有的な空間を割り当てている。