LIT

期間:2010-2012
用途:専用住宅
所在地:東京都千代田区
規模:地下1階,地上3階
構造:S造
用途地域:商業地域
許容建蔽率・容積率:100%・240%
敷地面積:51.47m2
建築面積:41.20m2
延床面積:120.70m2
構造設計:名和研二/なわけんジム
施工:アイエスエー企画建設 中村登喜夫
写真:平井広行
担当:上田知正
October Ueda and Nakagawa Architects


Life in Tokyo ― 都心回帰型狭小戸建住宅の回顧的未来

経済成長期の地上げ(集約)は、主に接道条件がよくなることで容積率がアップし土地の価値が上がるという仕組みでした。広い道路に面した土地があって、その背後に細切れの土地が細い枝道に接道している場合、細切れの土地は狭い前面道路幅員によって高さと容積が極めて低く制限されますが、これらを広い道路に面した土地と一体化すれば、今までの最大容積の合計をはるかに超える容積が得られるわけです。

LITの敷地は、まさにその逆です。元は中規模ビルが建っていた敷地で、それを三分割したものの一つです。三分割の一つだけが旧前面道路に接道しており、奥の二つは横の枝道(私道、みなし道路)に接道しています。LITの敷地は、無論真ん中で、高さも容積も低く制限されています。中層ビル用敷地が、そのままでは売れずに分割され、価値が低下し戸建用に購入することが可能になった土地、ということです。

世田谷に見られるような、大きな邸宅が相続によって分割されるのとは異なった現象です。都市縮小・人口減少時代の都市の象徴的現象です。すなわち、床(容積)はすでに余っており、売れないから価値が下がる手法(分割)でも、売ってしまうということです。土地が小さくなり、価格が下がって、住宅規模の小規模建築が都心に新たに建つ。そこに居住の都心回帰が重なっているわけです。

狭小と呼んでいい建物しか建たないことを分かっていながら、クライアントは計画当初から、事務所と賃貸可能な階を作ることを希望していました。話を聞いて私は絶望的な気分になりました(建築家は空間芸を披露したいという欲望がありますから)。狭小住宅にとって数少ない空間的切り札である吹き抜けが、ブツブツに区画せねばならないため使えません。垂直型の完全独立二世帯同様、動線の計画はひどく制約され、設備コストはかなり大きくなります。狭小においてこの希望を実現することは、設計的・資金的自由度が致命的に損われることを意味します。

設計しました。よくよく考えてみれば、それらの要求は、都市縮小・人口減少時代の都心回帰型戸建住宅の可能性を端的に表していると言えます。狭小住宅において広さ(物理的な、心理的な)を完全に捨て去り、4人家族と店子と事務所の人とそれらの持ち物を押し込み、地価に対抗すること。設計は階算定との戦いとなりました。

New Life in Tokyo と言うべきだったかもしれません。しかし、かつての長屋の垂直バージョンに戻っているのかもしれず、そのNew/Oldな回顧的未来が何がしかの可能性を都市にもたらすのか、継続的に考えるべきだしそれに値すると考えています。